銀行マンへの「遺言」
――この3月末でみずほ銀行を退社して、直前に2作目の『起死回生』が上梓されました。銀行を辞めたのはどうしてですか。
本当は銀行員を全うしたかったですよ。しかし、銀行は本当に変わってしまった。銀行の仕事というのはもっと誇りを持ってできるはずのものだったのに、今はそれもない。昨年の12月にみずほ銀行の本店に支店長が集められ、幹部から増資の話を聞かされたのですが、幹部の口から出たのは支店長たちの尻を叩くような言葉ばかり。自分たちの経営責任に言及し、「支店長の皆さん、頼みます」と頭を下げられることを期待していたのが、見事に裏切られました。
―― 何が変わってしまったのでしょうか。
私は旧第一勧業銀行出身です。第一勧銀は合併会社で、たすきがけ人事やら、旧2行の確執やらいろいろ問題があったことは確かです。けれども、行内風土は非常に自由なものだった。言いたいことが言える、そんな雰囲気があった。それが一変するきっかけになったのは、1997年の総会屋事件です。
あの事件の際、私は広報部次長でしたが、事件をきっかけに本当に銀行を変えたいと思った。何人もの逮捕者を出し、自殺者まで出したのですから、革命を起こさなければならないと思いました。だから我々が経営陣を突き上げた。「これは革命ではなく、クーデターだ」と吐き捨てた幹部もいましたが、コンプライアンス(法令順守)体制など、一定の成果はあったと思います。
ところがその後、経営陣が選んだのは3行統合という道です。統合の是非は経営判断ですから、とやかくは言いません。しかし結果として改革の道は閉ざされ、統合の成功だけが目的化し、その過程で経営陣にもの申すことができなくなってしまった。かつて幹部が言ったように、我々が総会屋事件直後に奔走した改革は、本当にクーデターで終わってしまった。残念です。
――前作の『非情銀行』(新潮社)では、銀行合併の真の意味と、銀行員の誇りがテーマでした。今回はどうですか。
先ほども言いましたが、銀行員の仕事は誇りを持ってできる仕事です。ところが今の支店の現状は、とても誇りを持って仕事をできる状況にはない。若手行員も悩んでいます。そうした若い人たちを元気づけたかった。
『起死回生』は銀行から事業会社に転籍した2人のOBの話です。1人は銀行の暗部をすべて引き受けるゼネコン(総合建設会社)の副社長。もう1人はバブル期の借金に苦しむが、まだまだモノ作りの力はあるアパレルメーカーの常務です。ゼネコンには役割を終えた企業を、アパレルメーカーには再生可能な企業を象徴させました。銀行員が誇りを持って取り組まなければならないのはもちろん、後者です。
――モデル企業があったのですか。
はい。私が支店長時代に再建を手伝った会社です。その会社に出向していた銀行OBと一緒になって再建に当たりました。今やスポンサーを得て立派に立ち直っています。再建途上では他行の支援はもちろんなかったし、本部も冷ややかでした。そのOBと2人で「こうなったら男の意地だよね」と言いながら、再建に奔走しました。
「担保をよこせ」「借金を返せ」が、銀行の仕事だとは思いません。「資金のことはこっちに任せろ。あなた方は本業に没頭してくれ」、これが理想でしょう。それを伝えたかったのです。
(日経ビジネス 2003/04/28 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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貸しはがしの実態、合併を果たし図体は大きくなったものの、進むべき方向を示せない銀行トップ、本来の使命を忘れ、問題先送りと自己保全のみに狂奔するモラルダウンした銀行の現場などを活写する。回収するだけで未来を示せない銀行ではダメだ、銀行の使命は企業との共存であり、いまこそ企業の再生に全力を傾けるべきという主張が全編を貫く。
著者は元都市銀行の支店長(執筆当時は現役だったと思われる)。それだけに銀行の内情の描写は説得力がある。
プロットは単純、勧善懲悪的な展開ではあるが、余計なものを殺ぎ落とした組み立ては悪くはない。
メガバンク、銀行再編、貸し渋り、貸し剥がし、債権回収、外資参入と瑕疵担保責任、会社再生法、金融庁検査、自己資本、債権放棄といった今日的な金融界の様様なキーワードが巧みにストーリー内にちりばめられており、外部からはわからない実際の銀行の事情を垣間見ることができると同時に、その実態に暗然となるのも事実。本書に登場したような志と気骨をもった銀行マンが主流になることを切に望む。
元都市銀行支店長が、トップがらみの不正融資や、その融資が回収困難になったため、それを銀行の関連会社ではなく、親密取引先に『飛ばす』という銀行の恥部を世間にさらす反面、脚光を浴びている企業再生、それも中小企業に対し実質的な再建カットを含めた企業再生を描くことによって、希望も含めて銀行員へエールを送っている。
作家としての経歴は浅いため、昔の高杉良などのようにぐいぐい引き込まれることはなく、また、途中で結論がわかってしまうところはいただけませんが、元銀行員としての経験を生かしたリアリズムあふれる内容は、それを補って余りあるものがあり、銀行員にはお勧めです。
この本のもう1つのテーマは,組織人としての自己実現という永遠の難問でしょうか。
ただ,話がかなりナマナマしいので,ついつい実話っぽく読んでしまい,
そうすると,こんどは,実話としては類型的すぎる人物造形が物語としての深みを欠くなぁ,
などと勝手な感想を抱いてしまいます。
ともあれ,永遠の難問には各自の回答しかないわけで。(^_^)
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