隠れキリシタンの末裔で,非嫡子。この出生を背負った市長だったことを,どれだけの人が知っていたのだろうか。「平和市長」のイメージが強い市長であったが,それは結果論。彼の「差別を受け続けた」痛みを伴う若き日の思いが,「弱い人を助けたい」という素直な盤石な思いとなり,政治家としての信念となり,それに従って進んでたどりついたまでのこと。弱くて,迷って,揺れて,それでも弱い人を助けたい,そんな素朴で不器用な一人の人間の人生をたどることが,たくさんの問題提起をしてくれる。率直に語る元市長の言葉を引き出すのに,どれだけの時間をこの記者は費やしたのだろうか。彼の人生を客観的に追いたい,追いかけることで何かが見える,そういう記者の思いも行間ににじんでいるような気がする。賛否あって当然という覚悟の元で。知らない長崎,知らない日本がここに。読んだ先に見えてくるものは,きっとそれぞれ。でもそれは読んだ人だけが手に入れられる価値あるもの。決して損のない本。ぜひ読んでほしい「逸」品。