これは紛れも無く、青春小説の傑作なのです。タイトルに「赤ひげ」とあるが本書の主人公はあくまで青年医師である。赤ひげ先生は青年医師が成長していく過程で様々な影響を与え続けていく。初めは反発していた青年医師保本も赤ひげ先生の考え方、生き方に感銘し、自分の進路を見つけていく。そこには自分の受けた過去の傷をも乗り越える、強い意志が生まれるのである。つまり、青春の課程をじっくり見せられるのである。これこそ青春小説である。人間の成長過程を見ることはなんと素晴らしいことか。自分の青春と比較してしまい、卑屈になってしまうかもしれないが、そんなことはない。青春とは一人一人違うものだし、その価値も人それぞれ違うものである。恋愛しなくてもいいよ。友達いなくてもいいよ。みんなと同じことすることないんだよ。でも、本書のような青春ど真ん中の物語は、誰にでもなんらかの感動を与えてくれる。卑屈にならず、ただ感動すればよい。そんな物語です。
各短編には結末が書かれていない。みんな想像すればいいのである。自分だけの「赤ひげ診療譚」が出来上がるはずである。