最初の本が出てから10年、前の巻から2年あいて、ゆっくりと『赤の神紋』は完結した。最終巻を読み始めたときに、これまでのテンションを持続できるのかどうか心配したけれど、変わらぬ緊張感のまま舞台は続き、様々な問題に決着をつけて物語は終わった。モーツァルトとサリエリのような天才と秀才の間の確執から始まった物語は、優劣や勝敗という形ではなく、それぞれが互いを認め、自分の場所で最善をつくす場所にたどりついた。そこに至るまでには人と人との境界を壊してメルトダウンしてしまうような場面がいくつもあったんだけれども。脇の人間達にも暖かい眼差しが向けられているおだやかな結末にちょっと驚いたくらいだ。それでも登場人物たちのイメージは鮮明に残っている。
劇作家の榛原憂月(はいばらゆづき)と彼の才能に嫉妬する作家の連城響生(れんじょうひびき)。 連城に見出され榛原に惹かれる演劇の申し子のような葛川蛍(かずらがわけい)と、16歳の天才少年来宮(くるみや)ワタル。榛原との確執で鉄道自殺を図り、両足切断しながらも生き残った伝説のハミル役、藤崎晃一。
ドラマCDが三巻まで出ている。配役が絶妙で、榛原も連城も蛍もワタルも奥田も渡部も桜も新渡戸も、声優さんの声で頭の中に響く。劇中劇もきちんと作ってあった。ぜひ続きを聞きたい。藤崎は誰が演じることになるのか知りたい。