映画作家アルベール・ラモリスの作品に初めて出会ったのは35年前、国鉄沿線の名画座だった。何気なく入って何気なく見た「フィフィ大空をゆく」の幻想的で牧歌的なエスプリに深く感動した。しかしこの監督は寡作かつ物故者だったので、再び出会うのはその20年後になる。1990年頃にNHK-BSでラモリス作品の特集が組まれたおり、「フィフィ...」の録画に成功、さらに数年後、大型ビデオショップにて「赤い風船」と「素晴らしい風船旅行」を発見、ダビングした。最後まで難航したのは「白い馬」。初期の作品で超短編のため、入手も放送も不可能、やっとネットで発見し、米国から輸入した時には、初めて見てから35年がたっていた。待ったのは35年だったが、米国からはわずか4日で届いた。そして21世紀になった今、DVD化された。ビデオを持ってはいても買ってしまった。これは私にとって、宝物に等しかったからだ。
彼の作品には共通の言葉がある。「大事なものを奪おうとする野蛮人から逃れ、どこか遠い世界へ旅立つ」のである。「大事なもの」とは、時に「白い馬」「風船」「空を翔る翼」「世界を駆けめぐる気球」であり、「遠い世界」とは初期には「海」であり、後期作品群においては「空」なのである。残念ながらこの監督はイランで空撮中に本当に空へ旅立ってしまう。あるいはそれは必然だったのかもしれない。