【掲載作品】桑いちご/木魂/鈴虫坂/袋の草紙/子消し/夢の精/まぼろし/虎次郎河童/雁供養/赤い雪
【エッセイ】鯨捕り/雪女/冬の夜遊び/寒造り
解説:呉智英。勝又進自筆年譜つき。
良いです。
作品の舞台となる時代が、近代化以前の昭和・大正から、遡ってちょんまげ時代まで。「嵐を呼ぶ男」が小道具に登場する「桑いちご」の昭和三十二年ごろが最新らしい。
ノスタルジー全開の世界ですが、解説の呉さんも書くとおり「いたずらに美化」はされていない。
繰り返し描かれるモチーフが小便、夜這い、農村社会、封建制度の残滓…といったところで、前のレビュアーの方々が書かれたとおり、「生と性」「匂い」の饗宴。
ただし何らかの「計算」というよりは、単に作者が描きたいものを描いただけじゃあないかという気もします。
初出掲載のほとんどが「漫画ゴラク」ですし、今ほど世の中が賢しらでなかった昭和五十年代の作品ですので。
「人に会うのも半年ぶり」の山暮らしの炭焼きたちと栃の古木を巡る物語「木魂」、
種田山頭火へのオマージュ「夢の精」、
まだ守り神として人間界との交流を残していた(三橋美智也の歌から察するに、昭和三十一年以降の話らしい!)義に篤い河童の活躍「虎次郎河童」
…が私の特にお気に入り。
山頭火らしき乞食坊主が橋の上からする立小便にかかる虹のコマ、虎次郎河童ラストの夜が明けてゆく山道のコマなんて、もう、良すぎて………。