登録情報
|
この物語は、波子という一人の女性の、善悪を超えた、たくましい生き様をメインテーマとして描いている。極限状況で子供二人を連れて「生き抜く」ということを正面から描いている。
もちろん舞台となった「満州国」は必要不可欠な存在だ。この物語の状況は悲惨だ。重い事実が次々と活写される。私は戦争や満州国を知らない世代であるが、それでもこれ以上ない悲惨な事実から自ずと立ち上ってくる教訓を重く受け留めたい。
文章は情緒的な表現を極力避け、いたって簡潔である。だからこそ、リアルで深い。重い事実の数々を、目を逸らすことなく真正面から見事に描き切っている。この半世紀以上もの間、他の誰も正面から描き切らなかった「満州国」を描き切っている。その一点だけでも文句なく傑作といえ、歴史に残るべき作品であろう。それにしても、他の同世代の作家たちは何をしていたのであろうか?
作者なかにしは自ら「デラシネ」であることを自覚し、恋する「祖国・日本」と、別れた「幻の満州」について考え続けていた。その成果がこの作品である。デラシネであるがゆえに、日本や満州について考えざるを得なかったのだろう。
先日、試写会で映画版『赤い月』を観た。だが、映画はヌルかった。満州国も一人の女の生き様も全く描き切れていなかった。小説が凄いだけに、ヌルイ描写の映画に失望した。映画は原作とは異なり、様々な点から逃げていた(何から逃げていたかは、この映画が「何を描かなかったか?」「どこを改竄したか?」をチェックすれば明らかだ)。そもそも2時間弱という短時間では映画化できるはずもない作品だったのだが、それにしても事実を直視し切った原作に対して、冒涜ともいえる酷いものだった。今から再映画化を切に望みたい。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|