こんなにも過激で怖い音楽は他に無いんじゃないか。カウンターテナーとバイオリン・ピアノによるお上品でお堅いクラシック音楽なのに、詩の内容は女児誘拐犯、禁断の愛、SM、監禁、人食を思わせるものまである…この異常なギャップが怖すぎる。古めかしく純文学的な語り口の詩の裏にひそむ、狂気・倒錯・禁忌の世界。カウンターテナーのアカデミックで高尚な歌声が、背徳的な詩との落差で、かえって不気味で病的。音だけ聞いていれば、クラシック・童謡・日本歌曲のようで、清らかで美しい。歪み・狂気を、あからさまな形では表現せず、演奏も歌唱も詩も、常に知性的で品行方正で禁欲的な筆致を崩さない…そこに背筋がゾクゾクするような恐怖がある、この上なく背徳的な味わいがある。心のない人形の瞳のような冷たさ・残酷さ。すごすぎる!震えるほど素晴らしい。
「知るや我が娘」は瞑想的で格調高いピアノに思わず嘆息…美しい!日本の伝統美を感じるメロディで歌われる内容は、かなり意味深。「躾け糸」はどこか大正浪漫な味わいのある上品な曲調・明るく甘美なメロディと、背徳的・倒錯的な詩世界との落差がかなり気持ち悪い。私のお部屋、壁、鉄格子、優しいお兄様…無邪気な語り口調なのが更に怖い、病んでる。「食卓」は高貴で麗しい曲に乗せ、人間を切り刻んで食べる様を歌う。あまりにも猟奇的。そしてこの上なく耽美的。間奏の、舞い上がるようなバイオリンとピアノのアンサンブルがドラマチック!「逃走」は陰鬱さと開放感、淡い色調の変化が絶妙。「銀文字にて」は鋭く踊るバイオリンと悲しげな歌声との交錯具合が良い。「O」は純真な子供が水に落ち沈んでいく。物語ではなく、ただ純粋にそういうモチーフを美しい一枚の絵として描きたかったという感じの曲。だが、それってすごく残酷。「赤いカバン」は夕暮れ、寄り道する少女、フッと現れる大きな影…鮮烈に浮かぶ情景・色、冷たい手で心を撫でつけてくるような歌とバイオリンに、思わず身震い。重くホラーなピアノと狂気のバイオリンが突如メロディアスに急変する間奏にしびれる!殺気立った終盤にも圧倒される。「歪みしカラダ」は哲学詩のような詩世界が素晴らしい。