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贈与の歴史学  儀礼と経済のあいだ (中公新書)
 
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贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ (中公新書) [新書]

桜井 英治
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

一年中贈り物が飛び交い、損得の釣り合いを重視する中世人の精神を探り、義理や賄賂といったイメージをまとい続ける贈与の源泉に迫る

登録情報

  • 新書: 232ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (2011/11/24)
  • ISBN-10: 4121021398
  • ISBN-13: 978-4121021397
  • 発売日: 2011/11/24
  • 商品の寸法: 17.8 x 11.4 x 1.7 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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儀礼は空虚であることはみんなわかっているが、現行制度を守るために演じる。私も会社でそれなりに昇進してその気持ちがわかるようになりました。この本は室町時代の贈与が主題ですが、登場人物の価値観が身近に感じられる面白い本でした。
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By 仮面ライター VINE™ メンバー
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 「贈与」というと、私たちは「お中元」や「お歳暮」あるいは誕生日等の各種イベントに伴うプレゼントや親から子への財産の移動、さらには賄賂などといった行為を思い浮かべる。多分、「贈与」という利他的行為自体は、母から子への授乳などを含めれば、人類の歴史とともに歩んできた観念でもあろう。ところで、著者の桜井英治氏は、東京大学大学院総合文化研究科の准教授で、日本の中世史や流通経済史を専門としている。同じく東大で史料編纂所の教授を務める本郷恵子氏は、その著『蕩尽する中世』(新潮選書,2012年)において、日本の中世を「蕩尽=過剰な消費」といった視点で描いてみせた。本郷氏は「需要(消費)が経済を引っ張る」といった、言わば“demand pull 型”の中世像を提示した訳だが、桜井氏はフェルナン・ブローデルの視座なども参考にしつつ、「贈与」という切り口で日本の中世を語っている。

 ただ、本郷氏も、例えば桜井氏の研究成果である室町幕府の「贈与依存型財政」には触れている。すなわち、「贈答にまつわるさまざまな無駄を最小化して、政権にとってできるだけ多くの利益があがるような仕組みを実現したのが、15世紀の室町幕府である」(前掲書p.218)と言及している。それはさておき、当書の大きな特徴として、中世日本における「贈与経済(gift economy)」と「市場経済(market economy)」への考察がある。とりわけ、桜井氏は「年貢の代銭納制が普及した13世紀後半以降の日本列島は確実に市場経済社会に入っており、それは石高制のもとで米納年貢制が復活する16世紀後半まで約300年間にわたって存続した」(本書p.113)と比定し、「年貢の代銭納制」等について、「この出来事は中世日本の経済にとって最大の事件であったといっても過言ではない」(本書p.110)と推断している。

 こうした市場経済化の背景には「宋・元交替」という中国の国内事情が関連し、大量の銅銭が日本に流入してきた、という歴史的事象も影響を及ぼしているみたいだ。そして、日本の中世後期は、「贈与経済」と「市場経済」という二つのファクターが複雑に絡み合いながら展開されていく。ここで面白いのは、市場経済化の進展、つまり商品需要の拡大膨張に伴い、朝廷や幕府が貨幣鋳造を行わず、中国の銅銭に依存していれば、本来ならマネーサプライの不足が起きるのだが、それがあまり顕在化しなかったようにも思われる。実は、そこに「贈与経済」の持つインプリケーションがあろう。「贈与経済」とは、まさに本郷氏のいう「現銭の経済圏」に対する「モノの経済圏」でもあるのだが、結果として「モノ(贈答品等)」が貨幣の役割を果たし、地域通貨的なコミュニケーション・メディアとしての機能も併せ持っていたのだろう。
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By touten2010 トップ1000レビュアー
中世の人々は、祭事の位置や席次やパレードの中の自分の位置に異常なこだわりを見せていた。「中世の人びとは損得勘定、釣り合いということに非常に敏感であった。かれらは、損得が釣り合っている状態を「相当」、釣り合ってない状態を「不足」とよび、他家との紛争や交際ではつねに「不足」の解消と「相当」の充足とを求めたのである。p.82」

盛んに者を贈りあったが、その贈り物は使用価値よりも交換価値が重視されており、人から贈られたものをさらに別の人への贈り物を贈るのはごく普通のことで、逆に所有者が贈答によって盛んに変わり、地位の高い人の間を次々と所有権が変わっていくような贈り物は贈り物としての価値が高まるのであった。

贈り物をされると相当の贈り物を返すのは慣習だったが、地位の高い方は返す次期を少し遅らせたりして、自分の地位の高さを示すのであった。

贈り物を調達するために、贈り物のリサイクルショップから調達したり、資金を得るために贈り物のオークションが開かれ、売られた贈り物がさらに贈り物として使用されるのであった。こうしてかなりの規模の「市場経済」とは異なる「贈り物経済」が存在し、多くの贈り物は換金されたり使用されたりすることなく、贈り物の循環世界をぐるぐると廻っているのであった。

「13世紀後半、中世日本の経済構造に大きな変化をもたらすひとつの出来事がおこった。それまで米で納められていた年貢が、このころをさかいにし銭でおさめる計態に変化したのである。これを年貢の代銭制というが、それが一三世紀後半、特に一二七〇年前後から急速に普及していった。・・年貢の代納制は日本列島に膨大な商品の流れを発生させ、その結果、代銭納制普及以後の日本列島では本格的な市場経済が展開したと考えられるp.110」

「AとB、BとCそれぞれのあいだに存在する二つの債権・債務関係の連結を認める社会では、債権の流通がおこるのである。中世日本も現代日本もともにこのタイプの社会に属するが、現代では債権者に無断で債権を譲渡することは禁じられているから、債権流通の自由度は中世のほうが高かったといる。p.167」

「中世とは、-現代とならんで-人間関係が日本史上もっとも希薄な時代のひとつに数えられるかもしれない。あるいは次のような言い方もできよう。インパースナルな関係とは要するに”替えが利く”関係ということであるから、中世の人びとは人間の個性をいうものをあまり信じていなかったのだと。p.172」

中世とは、市場経済が発達し、信用経済が発展するとともに、人情が希薄な時代であった。その点では現代に似ているが、こまかな「差異」や「釣り合い」へのこだわりについては我々の想像を絶する社会でもある。

経済の発展と社会のあり方は関係はあっても別物であるということが良く解かる。「この経済システムで、全く違った社会」ということが同じ国でもありえるのだ。
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