本能寺の変から賤ヶ嶽の戦いに至るまでに、
己が見下し、己にへつらっていた秀吉という卑俗な人間が
主家をしのぐ強大な権勢を手に入れて、
その配下に屈服することを迫られた様々な戦国武将の葛藤が広がる。
「秀吉ごとき」に頭を垂れることを潔しとしない者、
家の都合や政治的理由からやむなく追従する者、
素直にその能力を認めて進んで奉公し、目をつむる者、
家臣が先に丸め込まれて己の自由が利かない者、
秀吉の調略にまんまと乗せられて都合よく利用されるだけの者…
金や恐怖で強引に従わせようとする秀吉の残酷な側面も早くも現れてくる。
保身のために自分の価値観や正義、道徳を捨てて
己が軽蔑してきた人間にへりくだることは己の矜持に許されることなのだろうか?
賤ヶ嶽の戦いに関する記載は後半の限られた頁だけなので、
何か別に、そうした人間模様や葛藤を示唆するようなタイトルのほうが似合っている。