まず、簡単に岡本さんの紹介をすると、外資系の運用会社を日本で設立し15年経営し、Chartered Financial Analyst(日本語名:CFA協会認定証券アナリスト)という国際的な投資プロフェッショナル団体の日本の名誉会長も務める投資業界のプロ中のプロの方です。
そう書くと非常に難しそうな本と思われるかも知れませんが、その予想を大きく裏切る本です。
これは運用の理と実を共に追求された方が書かれた投資の「心」の本だと思います。
書籍にも書いてますが岡本さんは瞑想やインドのヴェーダ哲学、老荘思想に感化された時期もあるほど、非常に精神世界に精通されてます。
従来の投資本とは一線を画した、日本人独自のメンタリティーに着目し、比較文化論的な視点を元に丁寧にわかりやすく解説されています。
これは推測ですが、岡本さんは外資系の金融機関というたぐいまれな「Make Money」を求められる世界で経営者として闘ってこられたので、普段私達が意識する以上に、日本人の持つ「和」を尊ぶ心や「感謝」の気持ちに魅入られたのでしょう。文章の節々に「感謝」という言葉が出てくるのがそれを表してると思います。
いくつか印象に残ったキーワードをご紹介します。
・知足のリターン
「足るを知る」とは、大きな欲をかかず現状に感謝する心を指します。
アングロサクソン的に1%でも高いリターンを追い求めるというよりは、世界経済の成長にのった平均的なリターンが得られれば良いのではという運用の世界を表現しています。
・「清富」
日本人のメンタリティーを示す言葉に「清貧思想」がありますが、その逆のキーワードです。
投資という社会的行為を通じて、富を循環させ皆で豊かになろうという想いが込められています。
岡本さんは自身が経営者時代に、運用会社の仕事を次のように教わったようです。
「運用会社の仕事とは、世界中の何億もの人々が将来、お金に困らにようにしてさしあげることだと教わりました。」
この考えに大変共鳴します。
・「6つの富(ふ)」
岡本さんは人がしあわせに感じる要素を6つ富(ふ)に分けて考えています。
1.ファイナンシャルアセット(金融資産)
2.フィットネス(健康)
3.ファミリー(家族)
4.フレンド(友人)
5.ファン(楽しみ)
6.フィランソロピー(社会貢献)
このすべての富がバランスよい状態が「しあわせ持ち」の状態と名付け、ただ単にお金を持っている「お金持ち」だけでは決して幸せになれないと示唆しています。
全編を読んで感じたことは、岡本さんは日本人に合う投資方法や考え方を伝えようとしてる点です。それを「和風資産運用」と名付けています。
以前、精神科医の大平健氏が「アメリカンドリーム」と「ジャパニーズドリーム」の違いについて解説していました。前者はずば抜けた成績を上げることに対し、後者は人並み+αの幸福を求める志向です。「和風資産運用」はこの「ジャパニーズドリーム」を実現する手法だと思います。
この本は「すべてのことに感謝しながら、平均的なリターンを享受し、みなで幸せになろう」という調和的な運用を色々な角度から説明している良書だと思います。
一読の価値があると思います。