本書を拝読する前に、まず以前に起業経営していたベンチャの時の広告について思いを馳せてみました。当時小さい企業ながら、かなりの金額を支出していました。不肖私の悩みは、費用対効果の測定が困難だったことと、どうやって費用対効果を高められるのかという二点でした。この悩みは解決しませんでした。それでも広告宣伝が大事であったことは言うに及ばず、ということでした。本書を拝読するにつれ、目から鱗が落ちる思いでした。多くの経営者は、経営学のテキストを小脇に抱え、考えているとは限りません。仮に今まで数多くの教科書が述べている経営理論を利用したとしても、必ず成功するということでもありません。それは過去の結果から集約された、結果としての戦略論を論じたものに過ぎないからです。ですから小さな企業も大きな企業の経営者も、その都度その場でその時最も適切と思われる意思決定で行動を行っています。つまり問題設定、モデリング、シナリオを考慮したシミュレーション、そしてそれらがアカウンタビリティにつながるという一連の行動です。本書は、結果としての戦略論ではなく、そういったアブダクション的推論とプロセスに基づく行為を重要視した点で、大変実践的な書だと思います。私にとっては印象的な書でした。