本の内容のあらましについては、↓を参照http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h10_2/jog046.html
部下に慕われ、敵味方を問わず周囲の人々全てを惹き付け、「聖将」と謳われた帝国陸軍軍人・今村均の全生涯を扱った伝記。
日中戦争(支那事変)における南寧作戦や、太平洋戦争初期におけるジャワ軍政、ラバウルでの持久態勢の構築など見所は多いが、圧巻はやはり敗戦後の戦犯裁判・戦犯収容所における今村の活躍ぶりであろう。卓越した情勢判断、抜群の弁論・交渉力、圧倒的な統率力、何よりも部下たちに対する無限の責任感。人の上に立つものはかくありたいと思う。
筆者は努めて冷静に今村の実像を捉えようとしており、手放しで賞賛しているわけではない。支那事変の際に不拡大方針に従わず、大東亜戦争(太平洋戦争)を肯定する今村に帝国陸軍軍人としての限界を見る。筆者の今村批判は、時に「酷な注文」に思えるほどである。だが筆者は「指揮官であった軍人のほとんどが、多かれ少なかれ部下たちを危険にさらしただろうが、その中の誰がここまでの責任を感じただろうか。今村は敗戦のラバウル以来、ただその罪責だけを見つめ、それを日常の行為に現して生きてきたのである」と総括しており、太平洋戦争に批判的で帝国陸軍に負のイメージを持つ戦後民主主義を生きてきた人間をも魅了する人徳を今村が持っていたことは疑いないであろう。