環境倫理学や未来倫理というキーワードで語られがちですが、ヨナスの倫理学が最も特徴的なのは「そもそも存在し続けるためにはどうすればいいか」が主題となっている点ではないでしょうか。倫理学では「より幸福になるにはどうすればいいか」を問うのがスタンダードとなっている感がありますが、「より長く人間が存続するにはどうすればいいか」をヨナスは問うのです。科学技術文明のもたらす危機感が彼にそう問わせたとも言えますが、ユダヤ人として「集団の存続の危機」を体験したことが、ヨナスに「幸福以前の倫理」の必要性を感じさせたのです。
この点を外してしまうと、ヨナスの倫理学は存在論を基盤とした胡散臭いものと映ってしまうかもしれません。彼の課題がそもそも「存在の在り方」であることを踏まえれば、賛同できるかはともかくとして、ヨナスの倫理学はそれほど難解なものではないと思います。