我々が普段から接し、当然のことのように受け入れている貨幣について、その成り立ちから、金本位制、ブレトンウッズ体制の発足と変動相場制への移行、そしてユーロ発足までの歴史をたどり、さらにこれからの貨幣の方向性を探っていく意欲作である。
架空の島パンの木の国を例に挙げ、国と国民と銀行との関係をわかりやすく説明し、シニョレッジ(貨幣発行益)の考え方、一国の貨幣を清算するとどうなるのかまで、明快に説いている。
自然利子率の考え方、バブルの発生と恐慌、ハイパーインフレ、インフレターゲット論など貨幣をめぐる基本的な考え方を解説し、基本的な入門書としてもすぐれたものに仕上がっている。
著者によれば現在日本で進行中のデフレは、いままでの経済理論では説明ができないという。統計的に失業率と物価が逆相関であることを説明したフィリップス曲線が、日本をはじめとする先進国においては水平または発散している現実を示し、今までの成長とインフレを前提にしていた貨幣制度が行き詰まりを見せているとしている。
そのうえで、貨幣に金利をつけるマイナス金利のような考え方を提示している。
深く考えさせられ、多くのことを学ばせてもらった本である。
近未来に日本と世界に起こるであろう貨幣をめぐる大きな変動(著者はあとがきで、突然いなくなってしまうミツバチを例にたとえ、相転移という形で起こる可能性を示している。)を予感させる。
そして、人類を近づく脅威に気が付かず市場という船の上で無駄な議論とばか騒ぎを繰り返す愚者の集団としている。
残念ながら、地球環境をめぐるCO2削減の議論や、生物多様性の議論、核のない世界への議論などみても、著者の主張は正しそうである。
試行錯誤でできた貨幣制度を今一度、試行錯誤をしつつ生まれ変わらせることができるのであろうか。