読み応えがある新書。塩見さんは、明治維新後の被差別民を巡る状況変化を組み込みながら、明治から現代にいたる政府による貧民政策の変遷を説明している。現在と当時の地図を重ねる形で、帝都の各貧民窟を紹介しているのには唸らされた。これには信濃町、新宿、神田などの地域が含まれる。
また、日本の資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一の業績に大きな評価を与えている点も印象に残る。渋沢は、東京養育院、東京慈恵会、日本赤十字社、聖路加などの設立・運営に関わっている。その中でも、東京養育院から東京都老人医療センターにへとつながる社会背景の変化が興味深い。
塩見さんは、自分の経験から積み上げる形で貧民史を書いてらっしゃるように感じます。ただ資料を押し付けるのでなく、自分が歩いて疑問に思ったことを調べてきたのだと思います。