医療機関における深刻な医師不足、そして現場の疲弊、そこから逃避する医療関係者、ますます疲弊する医療現場。こうした状況はもはや地方だけの問題ではない、着実に全国に広がりつつあるという。その原因を本書は政治ミスが招いたものだと断定する。
1.医療法における人員基準(住民辺り医師数の基準)が、いまだ昭和23年策定時のままであるという立法の怠慢(しかも、医師数の最低基準を定めたはずなのに、それが標準値となり、いつの間にか「医師数抑制」を推し進めるための上限値になってしまった不可思議)。
2.厚生労働省は、「医師数は過剰、偏在だけが問題」といったん表明した手前、数字のボロが出たら65歳まででカウントしていた医師数を、いつのまにか年齢上限なしでカウントし、あくまで「医師不足でない」と言い切る欺瞞。
3.医療訴訟で医師を追い詰めることで、外科・産科など危険な分野がますます敬遠され、現場がますます疲弊してミスを誘発するという悪循環。
4.安易な救急車への通報で、肝心な患者を救えない皮肉。
などなど、医師と医療をとりまく悲痛な叫びが聞こえる一冊である。最近起きた「駆込み妊婦流産事件」で医療界を非難する論調が相次いだが、あの事件の遠因も国政のミスによって起こるべくして起こった、ということが納得できる。そしてそれは他人事ではなく、我々国民に確実に降りかかってくる、という重たい問題の所在を気づかせてくれる、格好の入門書である。