3.11の津波で大打撃を受けた釜石の復興の様子を、ラグビー(釜石SW)、製鉄所、漁業を軸に、ノンフィクションの名手が描く。津波に襲われた瞬間の恐怖。復興途上の苦難の道のり。街の人びとを勇気づける釜石SW、立ち上がったかつての新日鉄釜石V7のメンバーたち。そして、9.11の釜石SW開幕戦。涙と感動の復興ドキュメント。
【本文引用1】
W杯開催地の釜石招致。最初、聞いた時、こちらは冗談かと思った。笑ったら、釜石SW事務局長の増田久士にぴしゃりと怒られた。ホンキなのである。
水面下で、釜石市、岩手県、日本ラグビー協会へのアクションは始まっているようだ。そういえば、新日鉄釜石OBの石山次郎も大阪のトークイベントで「W杯釜石招致」をぶち上げた。ラグビー界きっての沈思黙考の人ゆえ、言葉には重みがある。
「二〇一九年ワールドカップを釜石で開催したい。元気に復興した証として、世界中に釜石を発信したい。じつはその実現に向け、動いています」
【本文引用2】
降りて、逃げろっ! そう叫びながら、森は交差点付近の沈んだ車に近寄っていった。運転手は水圧でドアが開けられない。もがきながら、「助けて!」と口を動かしている。
森は腰まで水につかり、水没した車のフロントガラスを素手で割ろうとした。割れない。車が前後に揺れるだけだった。ならば横のドアのガラスだ。右こぶしでどんと突いたら、ガシャンとガラスが粉々に砕けた。ドアをこじ開け、まず家族五人を救い出した。
「こぶしの衝撃は覚えています。大した痛みはなかった。アドレナリンがたぶん、出ていたからでしょ。ラグビーのほうが痛いんじゃないですか」
【著者紹介】
松瀬学(まつせまなぶ)
1960年長崎県出身。早稲田大学ではラグビー部で活躍。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク支局に勤務。2002年に同社退社後、ノンフィクションライターに転身。人物モノ、五輪モノを得意とする。著書に『汚れた金メダルー中国ドーピング疑惑を追う』(文藝春秋=ミズノスポーツライター賞受賞)、『五輪ボイコット----幻のモスクワ、28年目の証言』『早稲田ラグビー再生プロジェクト』(ともに新潮社)、『サムライ・ハート上野由岐子』(集英社)、『スクラム----駆け引きと勝負の謎を解く』(光文社新書)、『匠道----イチローのグラブ、松井のバットを創る職人たち』(講談社)、『武骨なカッパ 藤本隆宏』(ワニプラス)、『ラグビーガールズ----楕円球に恋して』(小学館)など多数。
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