ベストセラーを今更読んだ。
率直に言って面白い。辛辣なことを言っているのだけども、筆者独特
の文体がそれをユーモアに還元している。
それにしても驚いたのは、レビューの多さ(私の前の時点で432件!)。
たいていレビューが多い本は、全体的に支持されているというよりは、
賛否両論なことが多く、この本も売れた割にそれほど☆の評価は高くない。
批判的レビューを読みとおすと3つのパターンの批判があることに気付く。
A:内容がつまらない、くだらない。
B:勝ち犬/負け犬の二元論では語れない。
C:負け犬は負け犬で幸せなんだからそれでいいじゃないの!
Aは批評ではなく感想だ。ただそれが悪いわけではなくカスタマーレビュー
なのだからそれはそれで正しい。面白い/つまらないは主観の問題で、他の
人間がどう言おうと本人が面白くないと思うならば仕方ない。不快という表
現を使う人が多いが快/不快も主観の問題。仕方のないことだ。
次にBのタイプの批判だが、酒井は勝ち犬/負け犬という差異の内部でもさ
らに差異化していると私は思うのだがそれは違うのだろうか。
またCのような生き方の多様性を阻害しているという意見も目立つが、彼女自
身のスタンスは「(私も含め)負け犬であることを認めましょうよ」という
提案者だ。
しかし、BやCに対するもっとも重要な返答は酒井がエッセイストであり、
この本が新書の棚ではなく、講談社文庫の棚にある本であるということだ。
そして学知を世間一般に広く広めたいという動機で書き上げられた本ではな
い。この本が社会現象にまでなったことは彼女にとって埒外。エッセイスト
とは自分の思っていることを面白おかしく書き、それで読んだ人を楽しませ
る職業だ。だからエッセイスト酒井順子に対して正当な批判は、Aだけだと思
う。
そして私は冒頭にも書いたが面白いと思ったので4つ☆。多少、最後のほうま
でテンションが維持できていないような気がしてマイナス1。