本を読んだだけで達人になれるほど世の中甘くないが、この本には修行者にとって多くのヒントが詰まっている。
新陰流の上達論として、剣道にも受け継がれている「習い・稽古・工夫」の螺旋円環があるが、次の段階に至るのに必要な「工夫」は自ら掴み取らなければならない。しかし修行の進度が深くなると、次の段階に至るのが非常に難しくなり、いわゆる壁にぶつかる状態になる。その時に新陰流の極意がわかりやすく語られているこの本を開けば必ずや光明を見出すことができるだろう。
新陰流は特に心の動きに着目しており、それゆえにそこで培われた秘訣や極意は諸芸に通じるものであり、武術や他の芸能にとどまらず、仕事や人間関係などの人生にも活かせると思われる。
もちろん、この本を読んだからといって新陰流の技術面は何も学べない。しかし、身体と精神は共に影響を与え合うものであり、心の状態が身体の有り様をもたらし、身体の勢いが心を左右するのであるから、書いてあることを本当に理解できれば、必ずや何がしかの上達をもたらすはずだ。