活字にしてしまえば、31歳の聴覚障害のある現在歯科技工士である女性がプロボクサーとして自己を実現するまでの見えない(気が付いていない)相手≒自身との戦いの記録であり、彼女の周囲の人々の証言集といった作りの一冊です。
著者の小笠原恵子さんの生のエネルギーが、物心がついてからその出口を求めて、彷徨する様子を、中学、聾学校高等部、歯科技工士学校、社会人の各時代の、自分の生のエネルギーを制御出来ず、自分を取り巻く周囲も見えていない時代に自分と周囲の人々を傷つけながら歩様子が痛痛しくもある。その中で、彼女は「格闘技」に何か居場所を見つけ出し、紆余曲折を経ながら彼女の資質を開花させるジム会長とめぐり合う。
このジム会長・佐々木隆雄(トクホン真闘ボクシングジム)が、小笠原恵子さんの導き手としての役割を果たす。佐々木会長は、中年以降に目の見えないハンディを得ながらも、人をボクサーを育てる資質を持つ。
人の出会いには、やはり「必然」はあるのかもしれないと思わせる。
言わば著者の小笠原恵子さんの赤裸々な半生記(反省記)とも読めるが、きっかけを掴み真っ直ぐに突き進む現在の姿勢が清々しい。
自分が何者か、あるいはその問いの手前で迷う思春期以降の貴方に読んで欲しい一冊です。