私は東北地方の山岳地帯を車で走っているので、よくテンは見かけるのだが、すばしっこく、道路を横断する影は見えるが、すぐに草むらの中に隠れてしまうので、その姿は一瞬だ。
生態など、知りようも無い。
その意味で、一話ごとにテンの生態についてミニ知識を教えてくれる本書は、ちらりとしか姿を見せない、「憎いあんちくしょう」に、親近感を抱かせてくれ、また、作者の本書を描く上での取材の様子などもかいま見ませてくれて、誠に面白い。絵本のごとき、可愛らしさで手に取られたとしても、損はしないと思う。
ただ、本書のタイトル「貂の家」にあるように、当然フィクションではあるが、厳然とお父さんとお母さん、娘に双子の息子という、絶妙な家族の貂が家を構え、家族として過ごしている。
その内情は順を追ってつまびらかにされてゆき、ラストには驚愕の事実が待ちかまえているのだが、それは昨年来の、サブプライムローン問題を契機に音を立てて崩れていっている世界経済の、その全容を知らずに安穏と暮らしていた奇妙にふわふわした高揚感(?)とでも言うべきあの頃の、『今は南アフリカが買いだよ?』などとほざいていた人々の顔が浮かぶのだ。
あまりに冷酷だが、これが現実なのである。
…なので、ラストを最初に見ちゃうのは反則。
きちんと最初のページからお読み下さい。
最初は絵柄の違いにびっくりされる向きもあろうが、一條氏は健在です。