作家の死がテーマの「使い走り」以外は全て離婚経験のある(若しくは離婚を経験する)男の閉塞的な日常が別れや不安や微かな希望と共に描かれており、自身離婚経験のあるカーヴァーの半自伝的小説のように感じました。
解題で村上さんが述べるように作品のレベルはカーヴァーの最高時と比較出来ませんが、表題の「象」や「ブラックバード・パイ」、「使い走り」は読み応えがありました。個人的に汲み取った各短編のテーマと内容を評すると次のようになります。
(1)「引越し」=母がテーマで星3
(2)「誰かは知らないがこのベッドでねていた人は」=2度目の妻と不安がテーマで星3
(3)「親密さ」=前妻がテーマで星3
(4)「メヌード」=不倫がテーマで星3
(5)「象」=孤独と父と希望がテーマで星4
(6)「ブラックバード・パイ」=別れ(離婚)がテーマで星4
(7)「使い走り」=(作家の)死がテーマで星5
村上さんの解題は38ページにも及ぶので、カーヴァーが特に好きな方や翻訳家としての村上さんに興味がある方は一読の価値があると思います。
蛇足ですが「象」の主人公の「もっとひどいことになりかねなかったんだ」という言葉が村上さんの「ねじまき鳥クロニクル」の主人公の言葉に重なりました。