「ハイパーインダストリアル社会とは、自己破壊的になってしまった資本主義社会のことです」p4
テクノロジーによる自己と個の喪失への危険を指摘する、ある面でおどろくばかりにまっとうというか、クラシカルな視点である。本源的なナルシシズムがうしなわれるという状況を警告しているこの主張を、愛と人間性が喪失していることへの危機感といいかえるなら、この著者は深くキリスト教的であるという読解も可能だろう。しかし米国東海岸の左翼的知識層の主張ほど単純化されてはいないし、ヴィリリオほどネガティヴでもない。テクノロジーについての視点をふくめ、バランス感にすぐれた旬の書き手であり、おすすめしたい。なお「象徴の貧困」とは、意味を生み出す力が機能不全におちいっていることをさす文字通りの語義であると、訳者は巻末で解説している。