篠田節子さんの作品には、いくつかのジャンルがある。私の考えでは、文章やプロットなどにおいては、「神鳥―イビス」のような、深い情念を含んだホラーの方が完成度が高い。
しかし、「女たちのジハード」のような、社会風刺や批判を含んだものは、ホラーよりも広い読者を持ち、篠田さんの問題提起が含まれていて、多くの人の共感を生む。
この作品は、後者に属しているが、「女たちのジハード」と違ってミステリーのタッチを持っている。ここでは芸術とは何かという深い問題が扱われている。
至高の技術の上でないと、本当の芸術は生まれないのか。プロとして訓練を受けた人は、技術が完璧でない者が高い人気を得ることに不快感を持つことがある。しかし、ファンが喜ぶということ自体の価値を忘れてはいないだろうか。プロの目に頼って価値を決めることによって、クラシック音楽の世界は、多くの人を遠ざけているのではないか。
だが、現代の芸能界では、作られた感動的なストーリーによって生まれたヒロインもいるし、そのため消えて行った人もいる。
この作品のバイオリニスト園子は、クラシックの世界と、芸能界の狭間で生きながら、焦り、傷ついていく。
篠田さんは、自らが提示した問題を展開するが、結論を出すのは我々読者であろう。あるいは、我々もまた、疑問を持ち続ける。
大切な問題提起を含んだ、力のある小説である。