旧日本海軍の商船改造空母の大半が「正規空母の補助」にこだわりすぎ、直衛艦の低性能ぶりもたたって次々と沈められたのに対して、米英海軍の護衛空母は損害を蒙りながらも大半が激戦を生き延び、戦線の維持に大きく貢献した。本書では、その違いを、主に日米英3国における商船改造空母の設計や建造方式の比較により解説した良作である。油圧式カタパルトの威力やブロック工法の活用がもたらす工期の大幅な縮小が語られるなかで、読者は基礎的な工業技術の差が運命の分かれ道だったことに気付く。本書が主に米英の護衛空母を軸に展開しているのは、まさにその点を強調したいがためと思われるし、造船が工業技術の集合のひとつである以上、著者の論の進め方は適切と思われる。
ただし、通商護衛作戦をより適切に理解するためには、空母以外の護衛艦艇やその戦術についてもっと知る必要がある。大井篤『海上護衛戦』(学研M文庫)などと併せて読み進めることにより、本書の価値が初めて真に生きるものと信ずる。
私自身について言えば、小学生の頃に海戦記を読んで、戦艦「大和」がサマール島沖海戦で護衛空母を相手に苦戦するシーンに首をかしげたものである。その疑問が、本書を読むことで完全に氷解したのである。なるほど、カタパルトでマシンガンのように次々と飛行機を打ち出されては、前日に「武蔵」が航空攻撃で沈んだこともあるので、うかつに近寄ることもできないだろう。
世間は戦艦「大和」ブームで浮かれ気味だが、だからこそ本書のような冷徹な分析を読んで、頭を冷やしてもらいたいと思うのは私だけだろうか。