敗北の屈辱と失意の念を乗り越え人類を脅かす敵・魔物に向かって攻勢に転じる若者達の活躍を描く傑作英雄ファンタジー大作の第1部完結編です。厳しい時代に生まれ否応なしに魔物との戦いを強いられ経験を積んで危機を乗り切って来た3人の若者達でしたが、何とも皮肉な事に中盤から今度は人間の悪党達に酷い目に遭わされます。裏切り・闇打ち・盗賊と身も心も痛めつけられた末、やがて遂に運命が3人の歩む道を交差させ、互いに助け合いながらクライマックスの杣が洞村での魔物との決戦に流れ込んで行きます。それぞれに苦労を重ねた3人は全く違う方法で魔物に対処します。一番年下で17歳のロジャーは旅芸人として陽気なお話で人々を励ます才能の持ち主で、意外にも楽器のヴァイオリンを武器に戦います。9つ年上で26歳と最年長の娘リーシャは師匠ブルーナおばばから教えを受けて薬草師になり病気の人々の命を救い、いろんな薬を調合して魔物を苦しめます。そして一番の強者24歳の配達師アーレンは名前を捨て‘護符の男’と呼ばれ、頭を剃り上げ全身隈なく刺青を施した姿で漆黒の愛馬・夕舞号−トワイライトダンサーに騎乗し魔物をこの世から根絶やしにしようと執念を燃やします。本書の読み所はアーレンが「人間は絶対に魔物を倒せるのだ!」と臆病だった村人達を力強く鼓舞し様々な策略で魔物に立ち向かう大スペクタル活劇の戦闘シーンであるのは勿論ですが、やはり名場面としてアーレンとリーシャの初々しいラヴ・シーンが圧巻でしょう。リーシャの懸命に村人を助けようとする優しい心が人嫌いで頑なだったアーレンを変え人間らしさを取り戻させる場面や、アーレンが魔物の肉を喰らう尋常でない恐ろしい生き方を選んだ己の行く末を案じて苦悩する場面に著者の安易でなく深みのある人間ドラマを生み出す力量を感じました。現在執筆中の第2部でも気になる3人の運命が読めます様にと祈っております。