アメリカ・ファンタジー界期待の新鋭ブレットが放つ処女作で本国に先駆けてイギリスに続き先行出版された話題の三部作の第一部を3分冊にした第一巻です。本書に描かれる物語世界は科学文明が終焉を迎えた後に訪れた農業を中心とする村社会で、日没を境にして地中から魔物が湧き出でて人間に襲い掛かるという真に過酷な環境です。人々は護符で囲った屋内で息を潜めて朝の訪れを待つしかなく、油断すると隙を突かれて無慈悲に殺されてしまう運命で多くの死者が出ていた。次第に人口が減少していく世界で頼りになるのは、護符描きの訓練を積んで旅をし村々に物資や手紙を届ける役割を務める配達士だった。物語は11歳の少年アーレン、13歳の少女リーシャ、3歳の子供ロジャーのそれぞれ別々の境遇の3人が運命に導かれて成長し勇敢に魔物に立ち向かって行くという痛快な英雄譚です。本書はまだまだ序盤の修行時代で力が足りず忍耐の時期ですが、既に期待が持てそうな資質を見せてくれています。農場の少年アーレンは人間が魔物にやられっ放しである事に悔しさを感じて怒りの炎を燃やし、どうにかして退治出来ないかと考えるガッツの持主で、臆病な大人達に幻滅を感じて村を出る道を選びます。少女リーシャは悪い母親から虐待される嫌な日々に耐える事から脱却し、村の薬草師のばあさんに弟子入りし人々を助ける道に進む強い意志の持主です。まだ3歳のロジャーは宿屋の息子だったのが、否応なしに過酷な運命に突入して行きます。本書の読み所の一つとして、どの村にも必ずひとりはいそうな‘手強いばあさん’アーレンが住む村の村長石女セリアや、リーシャが弟子入りした薬草師ブルーナおばばの老いても尚意気盛んな大活躍が小気味良く気分を明るくしてくれます。今後の予告によれば三人の苦難の道は早晩報われ人間的にも逞しく成長し勝利の快感に酔わせてくれるそうですので続巻を大いに期待して待ちたいと思います。