非常に読みやすく解りやすい本である。全体を4章に分かち、1章目は少年非行の統計からの結論の読み取りの誤謬、2章目はもはやトンデモ本として有名になってしまった「ゲーム脳の恐怖」の論理展開の誤謬、3章目はペースメーカーと携帯電話の問題点について、4章目は「ゆとり教育」と学力低下の相関について、を例に挙げて述べている。一見、単にメディアリテラシーの本のように見えるが、最後の5章においてはそこにとどまらず、果たして「正答を求める」ことが妥当なのかどうか、という考え方の根幹に行き着く、一種哲学的な書物になっている。
当否はともかくとして、読書の質を高める役にたつ。多くの人は、自分のもつ意見と近い方向性の本を読みたがり、「やっぱりそうなんだ」と安心するのが好きである。統計がウソをつくということでけであれば、これまでも多く指摘され、それについての書物もたくさん出版されている。本書は、統計や議論の前に意図が存在すること、それに対して我々はどのように自分を持つのかという問いかけをしている点で、考えさせられるものがある。筆者の考えと私の考えは、いくつかの点で乖離しているが、それより上の次元で星5つで推薦できる本である。