著者の原田宏二氏はもと北海道警幹部で警察の裏金問題を明るみに出した勇気ある告発者の一人。
第1章は現職警官の実名告発として話題になった愛媛県警の仙波巡査部長を取り上げている。詳細には触れないが、心あるものならば涙なしに読み通すことはできないだろう。腐敗に満ち満ちた愚鈍な連中を警察幹部に押し戴くことに、一国民として最大級の恥辱と憤激とを禁じえないと同時に、仙波氏のような高潔かつ優秀な人物の魂に触れえたことを、やはり一市民として心の底から誇りに思う。自分としても、せめて今後とも氏の背中を見つめ続けていきたいと思っている。
第2,3章は、幹部の保身のためにほぼ責任のない個人が生け贄にされていくさまを活写している。特に第2章はノワール(冷徹な犯罪小説)の趣もある。また長い警察業務の中で原田氏が培ってきた、現場を熟知した上での公平な視点とでも呼ぶべきものが随所にうかがえる。現場の困難をよく理解しつつ現場の空気に流されず、法に精通し法の要諦を押さえながらも杓子定規には陥らない氏のたいへん高度な現実主義的法運用能力を見れば、原田氏の優秀さも並みのレベルでないことが分かると思う。