アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」・通称エドガー賞の’82年度ベスト・ファースト・ノヴェル(最優秀新人賞)受賞作である。
また、「週刊文春ミステリーベスト10」の「20世紀海外部門」で第7位にも輝いている。
ミステリーファンなら一度は耳にしたことのある、足掛け44年にも及ぶ三代の警察署長にまたがる大河警察小説の名作である。今回やっと読む機会を得た。
43人もの若者を殺害したサイコパスの犯人は、ストーリーの前半で判明してしまうので、純然たるミステリーというよりは、これはジャンルを超えた歴史的な傑作ともいえる作品だろう。
いったん巻を開けば、ページを繰る手ももどかしくストーリーの流れの中に没入して、しばし時を忘れさせてくれる。
単なるエンタテイメントとしてだけではなく、「アメリカ」というものをこれほど象徴的に描いた作品はそう多くはないはずだ。アメリカ南部の縮図のようなデラノという田舎町。その三代の警察署長が織り成す様々な葛藤、そして奮闘。アメリカンドリームの頂点ともいえる大統領への道を歩む男と、アメリカの悪夢ともいえる大量殺人犯のサイコパス。世界中どこでもない、まさにアメリカの現実そのものが見事にドラマとして描き出されている。
本書は、壮大な人間ドラマと歴史ドラマが半世紀の長きにわたって繰り広げられる大河小説のような一大文学作品である。