普通、この手の著作は、反権力系のジャーナリストや学者が警察なっとらんとか、警察は腐敗しているといった政治的なメッセージを送るものになるか、警察をなんらかの理由で退職した人が、警察についての恨みを書き連ねるという形になるものが多いが、この著作は、もと警察幹部で実際に、捜査部門で長期間勤務した著者が、警察の捜査力の弱体化を憂えて、その原因や進むべきみちについての持論を述べたものである。しかし堅く抽象的なものではなく、具体的な事件を題材にして述べているために、わかりやすく、読んでいて「おもしろい」ものになっており、一般の読者や推理小説マニアなどにも十分満足できるものになっている。読んでいてつくづく思うのは、この人は本気で警察のことを考えているなあということである。驚くべきことであるが、実際に警察のことをよく知っていて、捜査経験も豊かな人が、このような実際的で具体的な批判をする著書はほとんどなかったのである。新しい時代の警察を語るためには是非、読んでおくことが必要であろう。とくに現職の警察幹部のひとにはお勧めしたい。