謎で始まり、ジグソーパズルを一つ一つはめていくようにその謎が少しずつ少しずつ姿を現していき、最後の最後でようやくすべてがわかるという犯罪小説。「謝罪代行社」という会社を立ち上げた4人の若者が依頼人の頼みで出かけた場所は凄惨な殺人現場だった。否応なく事件に巻き込まれ、翻弄される4人。
‘わたし’が誰で‘おまえ’が誰なのか。とある事件の‘before’と‘after’、様々な人物の視点と全体を把握している‘わたし’の視点とが入れ替わり立ち代わり描かれることで同じ場面を別の人物の感覚器官と頭脳を通して読者は知ることになり、それが非常に面白い造りになっている。
そして、どの人物も過去に苦しみや葛藤を抱えていて被害者でありながらも加害者でもあるという現代の複雑な犯罪事件を細やかに描いていて秀逸。文章が短くて読みやすく、場面転換が速いので映画のような趣。若者に働き口がないという社会問題や、市民がアジア食材をふつうに買ってきて調理するというベルリンの生活がさらりと登場するのも興味深かったが、一つの犯罪の背後に陰湿な別の犯罪が潜んでいるという幾重にも多層化された現代社会の闇が描かれたドイツ・ミステリーの秀作。
謝罪代行社 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)