初版に比べ上訴等の穴を埋めた結果、厚くなりコンパクトとは言い難くなったが
記述の柔らかさ、わかりやすさに変わりはなく
眠素と揶揄されることも多かった民事訴訟法の構造をゼロから学ぶ読者にとっては
現状限りなくベストに近い本であるとおもう。
法解釈学においては生理と病理があり、いわゆる論点等「試験に出る」領域は病理に属する。
学説の対立が激しい領域に自分なりの思考枠組を立てることも重要ではある。
しかし、特に手続法を学びはじめるにあたっては生理、常態の理解がより重要である。
ひとつひとつの条文がなぜ存在するのかを流れに従って丁寧におさえていくことが
第一段階の勉強になる。難しいことに手を出さない地味な勉強の繰り返しが力になる。
よって、まずは条文を引きながらこの一冊を読むことをすすめる。
基本的に条文・判例・定説を中心に論述が進んでいるし、通読もしやすい文体である。
ただ、理論的鋭さに知的刺激を受けるといった本ではないので
すでにある程度以上の構造的理解をとっている人が読むと物足りないかとおもう。
また、読みなれてくると、丁寧にすぎ、繰り返しが多く、くどいと感じられる記述も目立ってくる。
しかしながら、本書が平凡な頭を持つ初学者に対する教育効果の追求のみを真摯に狙った本
であることからすれば、これらの点も欠点とまではいえない。
その意味で百選や高橋重点講義と格闘するためのフィールドに上がるための梯子として
機能する本であり、また上りきったら投げ捨てるべき梯子ともいえるかもしれない。
著者もそのような準備運動を最効率で提供することを目指したふしがある。
要件事実のさわりも学べるので民法と民訴を自分なりに接合するきっかけにもなるだろう。
なお、著者に対しては民事訴訟法講義案(司法協会)との関係で
否定的な見解を持つ人も存在するが、少なくともユーザーサイドからみた
教材としての中身を問題とする限り、使いやすい良著であることは変わりない。
ともあれ、おすすめである。