本が出たとき、『朝日新聞』で池上俊一氏が書評していましたが、まるで見当はずれのべたぼめでした。稲本万里子氏が次のように評しているのが当たっているようです(『美術とジェンダー2』、ブリュッケ)。「謎の人物とされる後ろ姿の貴族を伴善男に比定する山根有三氏の論考が発表されて以来、美術史研究においては、山根氏の見解が定説となっており、筆者もそれを踏襲するものである。(略)黒田日出男氏は、日本文学研究者と中世史研究者による異説を取り上げ、あえて謎解きと称し、これに検討を加えているが、結論としては山根説を支持するものになっている」。それじゃ謎じゃないではありませんか。
研究史をたどりなおして、実はもう解けてしまっている謎についてあれこれいっているところより、この絵巻全体の表現を考えている後の方には読むべき内容があります。