2012年1月から東京国立博物館で開催される「北京故宮博物院200選」展に、これまで中国国内から出たことがない「清明上河図」が出品されると聞き予備知識を得るために購入。
本は「謎」をキーワードに書き進められている。
描かれた場所、時期、作者、来歴、真贋の程、画の長さ、等々、謎の数々を著者は丁寧に検証しているところが印象に残った。
本書は、まず来歴の謎解きから始まる。「五次入宮、四次出宮」という言葉に表されるように、北宋が滅び金人に渡ったと思われる「清明上河図」はその後宮廷と民間を行き来したとあるが、その流転の歴史を都市伝説のような挿話も交えて解説されている。
終の棲家として北京故宮の収蔵品となったのは、誕生したばかりの中華人民共和国の国威発揚と関係があるという件に中国らしい強引さが垣間見れて面白い。
歴代の王朝において権力者たちはそのステイタスを証明するために「清明上河図」を手にいれようとしたが、現代中国においても同様のことが繰り返されているということだろう。
さらに、日本をはじめとして世界に広がった「清明上河図」があらわす人々を引きつける力や、画の舞台「開封」の食事情などが細やかに述べられ、終盤では5メートルを超える絵巻を右から左に視線を移しながら、画の世界観を伝えている。活字を追うごとに画の中の人々の息遣いが聞こえてくるようであり、画が書かれたとされる北宋の都市生活を間近に見ているような錯覚にさえ陥る。細密に描かれたすべての事象が画の表情を豊かなものにしていることがよく伝わってきた。
最終章では、「天下第一画」と称えられている画が「動く清明上河図」となり、それを見た現代の人々の反応から「中国の国画」と呼ばれること、愛される理由が述べられ、「政治と文化」の中華世界独特な関係性について書かれ結ばれている。
著者は以前「ふたつの故宮博物院」という著書を手がけ、その中で故宮はただの博物館ではなくその裏には「政治と文化」が表裏一体となっていることを書いているが、この「清明上河図」も例に漏れずである。今回、中国国外へ初出品される訳にもそんな理由があるのではないかと勘繰ってしまった。
様々な謎に満ちた名画を見るために、必ず故宮展に足を運ぼうと思わせる1冊だった。