北村薫は「ミステリ原理主義者」と呼ばれる。膨大な読書量と切れ味鋭い頭脳で、凡百の駄作を切って捨て、美しい謎と仕掛けを讃えてやまない。落語で言えば、うるさがたのご隠居さんてェところだ。
そのご隠居さん……いや、ここはもうすこしハイカラに、高等遊民の旦那とでも言っておこうか? とにかく無類の物知りで話上手のオジサンが、短編ミステリの驚異と至福とを語り尽くしたのが、本作。
元本は傑作短編のアンソロジー。それを文庫化するにあたって、前口上として雑誌に連載したコラムを、この一冊にまとめた。オジサンと美人(?)編集者の軽快なかけあい漫才で書かれており、さくさく読めるが、中身はとてつもなく高級。元手と時間とプライドがかかった仕事だ。読書家の優れたガイドブック!!として、何度も参照することになるだろう。