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18 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
原語と読解力,
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レビュー対象商品: 謎とき『罪と罰』 (新潮選書) (単行本)
著者はロシア文学翻訳家として知られており、著者の訳でドストエフスキー他、ロシア文学に接した方も多いだろう。私の頃は米川正夫氏だった。その著者が「罪と罰」に仕掛けられた謎を究明するという探求本。その後、「謎とき「カラマーゾフの兄弟」」も上梓している。正直、一つの作品をここまで深読みできるとは思わなかった。ドストエフスキーの脳の構造が常人離れしており、作品に刻まれた圧倒的な心理描写、行動原理については少しは理解しているつもりだったが、ここまでとはね。著者は作品のテキストを読み込む事によって謎を少しづつ解明して行く。ラスコーリニコフの名前がアンチ・キリストに由来しているくらいなら、まあ少しの研究で分かるかもしれないし、読者が無意識に想定している事と合致する。それよりも被害者の家の敷居を「またぐ」という一般的単語が、「一般社会の倫理の境界を踏み越えて罪の世界に入り込む」という意味の単語から派生している点の指摘などは鋭いと思う。こうした指摘が随所にあり、文学を読む際、原語を理解する重要性を感じさせる。だからと言って、これからロシア語をマスターするのは困難なのだが...。そして、これは単に原語を理解するだけではなく、文学的な理解力も必要とされる作業なのだが。また、「聖なる娼婦」ソーニャは早い段階でラスコーリニコフと(娼婦として)肉体的関係を持ったのだが、作品の構想が大きく、また崇高になるに連れ、精神面だけが強調されているという指摘も、なるほどと思った。 通俗小説として読んでも面白く、原罪を背負った人々の魂の救済を描いたキリスト教的背景を持った小説として読んでも面白い「罪と罰」。そのような多重構造を持った小説を平易に解説してくれる貴重な道案内の学究本。
7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
文学は「謎解き」にあらず,
By ねっとてんぐ (東京都目黒区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 謎とき『罪と罰』 (新潮選書) (単行本)
著者の岩波新書「ドストエフスキー (岩波新書)」がよかったので、この本も書店に並んだときすぐ買って読みました。読んだときはたいへんおもしろかったのですが、今はちょっとちがう見解を持っています。著者が語学にすぐれたロシア文学者であり、ドストエフスキーにとりわけ深い愛着を持っていることはわかります。かつてドストエフスキーはトルストイなどに比べて作品完成度が低いとされていました。彼の小説は「思想小説」であって、文学作品としては比較的弱いと評価されていたことがあります。これはいわばリアリズム文学的評価。ドストエフスキー作品には象徴主義的な表現手法が使われており、それがわからないと作品が破綻していると思われてしまったのだと著者は主張します。著者はテクストを丹念に読み込み、作品の象徴主義的性格を解明して、そのような世間的評価を一変させました。 しかし象徴主義的解釈というのは実はむずかしいのです。著者はラスコーリニコフのイニシャルから主人公が悪魔を象徴していることを読み解いたといいますが、この解釈自体に根拠はないし、そのような判じ物が隠されていたからといって「罪と罰」の作品の価値を上げることにはなりません。重要なことは、悪魔のような所業を犯した根っからの近代人ラスコーリニコフがソーニャの純真さに触れて改心するのはなぜかということでしょう。不思議なことにラスコーリニコフが改心する場面は書かれていない。彼は、マルメラードフの死やスヴィドリガイロフの自殺のどさくさにまぎれてしばらく姿を消していたかと思うと、いつのまにか改心してもどってくるのです。謎といえばこれが罪と罰の最大の謎でしょう。 象徴主義は世紀末ロシアの文芸思潮として有名です。著者はパステルナークの「ドクトル・ジバゴ」に象徴主義を見出しているので、ドストエフスキーも同様だと思ったのかもしれません。しかし世紀末象徴主義は、フランス象徴主義文学や新カント主義哲学に影響を受けて始まったもの。ロシア正教では象徴的解釈の伝統がありますが、だからといってロシア文化自体がとりわけ象徴主義的なわけではない。ドストエフスキーはゴーゴリのリアリズムの影響を受けて文学を始めたわけで、象徴表現よりは風刺を好んだ。そう考えるとドストエフスキーを象徴主義的に解釈するのは限界があるといわなければならないと思います。 ましてや「謎解き」などという表題をつけたので、本全体が単なる判じ物に堕してしまっている。これでは象徴主義的解釈が本末転倒でしょう。
14 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
奥が深い…これが作家の行間か!,
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レビュー対象商品: 謎とき『罪と罰』 (新潮選書) (単行本)
ドストエフスキーの『罪と罰』を多角的な視点とロシア語の語源から捉えて小説の奥に隠されている様々なメッセージを読み取っていくというまさに“謎とき”の楽しさを教えてもらえる本。改めて『罪と罰』が読みたくなった。
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