ある意味、ゲームブックの悲劇は、このソーサリー四部作が「元祖でありながら既に完成されてしまっていた」事に尽きる。生みの親であるスティーブ・ジャクソンにしてすら、この四部作以降、これらを超える作品は作れなかったのだから、いかに完成度が高かったかが分かる。
ジョン・ブランシュにより描き込まれた挿絵も非常に独特で強烈な魅力があり、この人の挿絵が無ければ、いかに作り込まれた内容であろうとソーサリーの魅力は半減してしまっていただろう(残念ながらこの復刻版の表紙絵はオリジナルの雰囲気をまったく伝えていない)。この人の描く絵には「生活臭」がある。街の裏通りの危険な雰囲気、そこに建つ薄汚れた小屋と奇妙な住人、埃の被った棚に積まれた小物の数々、臭い立つ下水や肥溜めなど、最近のゲームの定番となった小奇麗な「中世ファンタジー」とはまるで違う世界の息遣いを感じる。
ただ、ズル無しで真っ当にプレイすると非常に難度は高い。「道を右に行くか左に行くか」などの単純な二択でもうクリア出来なくなる場合がよくあるのがゲームブックの欠点だが、取り返しの付かない所が現実でもあるので、そのシビアさにどっぷり漬かって遊ぶのも醍醐味と言える。
もしRPGはテレビゲームでしかプレイした事の無い人は、一度試しに遊んでみては。
PS.他の人も指摘しているように、復刻版の不満はタイトルや新訳にセンスが無いこと。こういう無粋な変更は止めて欲しい。