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諜報の天才 杉原千畝 (新潮選書)
 
 

諜報の天才 杉原千畝 (新潮選書) [単行本]

白石 仁章
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

国難をいち早く察知する驚異の諜報能力。この男にソ連は震えあがり、ユダヤ系情報ネットワークは危険を顧みず献身した―。日本の「耳」として戦火のヨーロッパを駆けずり回った情報士官の、失われたジグソーパズル。ミステリアスな外交電報の山にメスを入れ、厖大なピースを70年ぶりに完成させた本邦初の快挙。日本が忘れ去った英知の凡てがここにある。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

白石 仁章
1963年、東京生まれ。上智大学大学院史学専攻博士課程修了。在学中の1989年より、外務省外交史料館に勤務し、現在に至る。東京国際大学および慶應義塾大学大学院で教鞭を執っている。外交史とインテリジェンス・システム論が専門。特に杉原千畝研究は、大学在籍中からのテーマである(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 213ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/02)
  • ISBN-10: 4106036738
  • ISBN-13: 978-4106036736
  • 発売日: 2011/02
  • 商品の寸法: 19.2 x 13 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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32 人中、30人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By naichi トップ500レビュアー
1939年、ドイツのポーランド侵攻を機に、欧州大戦が勃発した。リトアニアには多くのポーランド系ユダヤ人が逃れており、反ユダヤ思想の強いソ連において非常に危険な事態におかれていた。その状況下において、日本を通過してアメリカなどに逃げれることを希望した避難民に、数千通もの通過ヴィザを発給した人物、それが杉原千畝である。後に「命のヴィザ」と称されたその功績は、国際的にも高く評価され、イスラエルから日本人として唯一の勲章が贈られたという。本書はそんなヒューマニストとして名高い杉原千畝を、諜報家としての側面から分析した一冊である。

◆本書の目次
プロローグ:杉原の耳は長かった
第一章  :インテリジェンス:オフィサー誕生す
第二章  :満州国外交部と北満州鉄道譲渡交渉
第三章  :ソ連入国拒否という謎
第四章  :バルト海のほとりへ
第五章  :リトアニア諜報網
第六章  :「命のビザ」の謎に迫る
第七章  :凄腕外交官の真骨頂
エピローグ:インテリジェンス・オフィサーの無念

「諜報」とはインテリジェンスの和訳であり、「地道に情報網を構築し、その網にかかった情報を精査して、未来を予測していく。そしてさらに一歩踏み込んで予想される未来において最善な道を模索する」ということである。「謀略」と誤解されることが多いが、「謀略」は未来を都合の良い方向へ強引にねじ曲げるものであり、「諜報」とはむしろ正反対にある。

杉原を一躍有名にした「命のヴィザ」については、今を持って謎が多いという。外務省と杉原との電報のやり取りに不可解な点があまりにも多いのだ。数の不一致、一度ヴィザが発給された人物への謎の照会、返信までの間隔の開き。そして、その謎は、当時ドイツとの同盟関係にあった日本の外務本省を欺くための「アリバイ工作」であったことが本書によって導かれる。彼のインテリジェンス活動の本領は、自国の官僚組織に対して発揮されたのである。

それにしても、そこまでの危険を負いながらも、杉原をビザ発給へと決断させたものは何だったのだろうか。重要なヒントが「決断 外交官の回想」という手記に記されている。

曰く、全世界に隠然たる勢力を有するユダヤ民族から、永遠の恨みを買ってまで、旅行書類の不備とか公安上の支障云々を口実に、ビーザを拒否してもかまわないとでもいうのか?それが果たして国益に叶うことだというのか?

この文面が示すのは、杉原がユダヤ人というものの未来を的確に予測し、最善な道を模索したということに他ならない。省益より国益を考え、個人でリスクを取って決断した杉原千畝、その恩恵は百年近く立った今でも、我々が預かっているものである。百年先の国益を考えた決断ができるか、個人でリスクを取った判断ができるか、今こそ、彼のインテリジェンスに学ぶところは大きい。
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26 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 閑居人 トップ100レビュアー
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著者は、杉原千畝の謎の幾つかに、新しい視点を加えることに成功した。
その一つは、満州国外交官をなぜ辞めたのかという問題である。ノンキャリアであるが、ソビエトとの北満鉄道譲度交渉に成功し脚光を浴びた異色の外交官は、満州国のような国家でこそ活躍の場が約束されていたのではないか。なぜ、満州を棄てたのか。
著者は、橋本欣五郎大佐との確執をあげる。陸軍は、杉原に多額の報奨金を用意して陸軍の謀略の要に活用することを強要しようとした。それは、ある意味では使い捨てのスパイとして様々な謀略に加担することである。杉原の洞察力は、その場合自分がどうなるかを見通してしまったであろう。そして、この時点で、杉原には、外交官としての自身の生き方がはっきりと見えていたように思われる。
著者はまた、リトアニアのカウナスにおける「六千人の命のヴィザ」についても、外交電報の分析から、杉原が、確信犯的に外務省本省と駆け引きを行い、最大限のヴィザ発行を可能にしたことを証明した。
評者は、実は、杉原は、家族の前で慎重な姿勢をとることで、特に、妻幸子を万一の場合、「杉原が本省の指示を無視したわけではなく、やむを得ず人道的に処理した」証人に仕立て上げようとしたのではないかと考えていた。その可能性を、著者の分析は示唆している。
また、著者は、ポーランドからやってきたユダヤ難民たちが「必ずしもナチスの迫害だけではなく、ソビエトの脅威にもさらされていた事実」を強調する。杉原がユダヤ難民にヴィザを発行したのは、1940年7月末〜9月初めである。この時期は、1939年9月、独ソのポーランド分割、そして1941年6月、独ソ戦争勃発の戦間期にあたる。1939年11月にはソビエトのフィンランド侵略(冬戦争)があり、1940年にはバルト三国併合が進められた。現実には、難民はソビエトの脅威に囲まれていたのではないか、と指摘する。

評者は、杉原千畝は、この当時のユダヤ難民の現実を、誰よりもよく理解していたと考えている。戦後、アウシュヴィッツが白日の下にさらされ、強力な独立国家「イスラエル」とユダヤ系金融シンジケートが厳然と存在し、10年に1度、ハリウッドが「忘れるな!」とばかりに「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」のような名作を送り出す現在から、当時を判断してはいけないだろう。
ドイツ、ポーランドなど中央ヨーロッパを中心にユダヤ難民を作りだしたのはナチスであるが、難民に冷酷な態度をイギリスやアメリカ、フランスはとり続けた。1939年、ユダヤ難民を乗せパレスティナに寄港した「タイガーヒル号」を委任統治国イギリスは不法難民として銃撃して「撃退」した。ハンブルクを出てアメリカ保護領だったキューバまで行きながら入国を拒否され、結局引き返し、難民の大半がアウシュヴィッツに送られた「セントルイス号事件」。これらの事件に前後して、ポーランド人やリトアニア人のユダヤ人襲撃(ポグロム)も各地で頻発し、多数のユダヤ人が殺されていた。国外脱出を試みても成功するとは限らない。ドイツ、チェコ、ルーマニア、至る所でユダヤ人の財産は没収されていたが、国外に逃れても一定の金額を持たない者は入国を拒否され、引き返せば収容所行きが待っていた。それが、当時ユダヤ人が置かれた状況だったのだ。彼らは、普通に幸福を求めて生きていく権利を持ちながら、ずぶ濡れになった犬ころのように扱われていた。多分、杉原千畝は、そこに何かを見たのだ。
(この時期のユダヤ難民の状況については、当時杉原と関係したゾラフ・バルハフティック「日本に来たユダヤ難民」1992原書房、ソリ・ガノール「日本人に救出されたユダヤ人の手記」1997講談社に詳しい。彼らは、いずれも杉原と縁を分かち合った人々である。)
このときの英米のユダヤ難民忌避政策が、ユダヤ人600万人という犠牲者をもたらしたという怨嗟の声は今でも少なくない。戦前、アメリカは年間2万人以上の難民受け入れを拒否していたが、もし柔軟な難民政策がとられていたならば、これほどの悲劇は生まれなかったのである。実際にドイツを歩けば分かるが、人口10万程度の市の郊外には必ず、「ユダヤ人と政治犯のための収容所」があった。そこで起きていることをドイツ人はもちろんイギリスもアメリカも知っていたのである。この問題は、戦後アメリカ・イスラエル関係の根底にあって、両国関係を規定する潜在的意識の一つである。
だから、当時、日本の一部に独自のユダヤ観があり、外交官杉原が存在したことは国際的に評価できるものなのだ。

杉原がこの不条理を座視できなかった究極の動機(内在的論理)とは何だったのか。
本書では、杉原のインテリジェンス・オフィサーとしての一面が強調されている。佐藤優が評価するように「杉原のインテリジェンス能力のすさまじさは痕跡を残さない」ことにある。そういった評価は小野寺信少将ももらしたことがある。亡命ポーランドのグループを使って対ソビエト諜報工作に奔走した小野寺は当然杉原とも連絡があった。小野寺はNHKドキュメンタリー「日米開戦不可なり」が放送されて2,3年後、1990年代初頭に亡くなった。その半年前、評者に「杉原がやったことは・・・。彼が人道主義者と呼ばれることには・・・」と評価を留保した。このころ、「カウナスの杉原領事」を称える記事がマスコミにも現れ始めていたからである。小野寺は言葉を濁したが、夫人の百合子氏(「バルト海のほとりにて」で小野寺機関の諜報活動を描いた)が、マスコミの杉原の扱いに不満なことはすぐ見て取れた。
外務省で見せた杉原の顔は、職務に忠実な情報官としての顔であったに相違ない。しかし、「杉原」という存在から感じられるものは、「若き日に感じた不正・不実に対する怒り」の感情を失うことの無かった一人の男の姿なのである。
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39 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
内容は推理小説みたいで、なかなか面白かったけど、ねむたいテッシーの帯がなければもっと良かった。それがマイナス一点。無理に『スギハラ・ダラー』と抱き合わせにする必要もない。実際は地味な研究書なのに、宣伝文句が大げさすぎる。中身は充実しているが、コマーシャルが難点で損をしている。

「『命のビザ』は稀有な外交官のインテリジェンスの賜物だった!」… 中ウソ
「ソ連はなぜスギハラに震え上がったのか?」… 小ウソ
「ユダヤ系情報機関はなぜ彼に献身したか?」… 大ウソ

とか、宣伝帯にあるけど、こんなことは本文に一行も書かれてない。

センセーショナルな見出しで、売れさえすれば、本書に書かれてないことまで宣伝のネタにする編集部のいい加減さには、老舗出版社の矜恃の片鱗も見られない。それが研究書としての価値を損なってる。

巻末にたくさんの学者さんへの謝辞が並べてあるわりには、本文中の主張の典拠がわからんことが多くて、「研究書」としては中途半端。一般向け読み物の域を出ない。「特に若い世代に読んでもらいたい」研究書なんてもんはあらんよ。参考文献も、外交史料館資料以外は、どうでもいいような概説書も多く、目配りの限界を感じる。欧文の参考文献ゼロってのも感心できない。クレジットのいい加減さと外務省関係者への過剰なヨイショ(要するに、楽屋落ち)は、やっぱ教養満載の識者たちの反感を買うだろうな。

書評とか読んでみて、この本に狂喜乱舞してるのは、「産経新聞」「正論」「みるとす」とか知性と品性を欠くメディアばっかで。。。なんでかなぁって読み直すとわかったよ。

この本は、ちょっと見には杉原さんを顕彰するように見えるけど、よく読んでみると「外務省は悪くなかった」って、外務省の立場を擁護する本なんだよ。まっ、著者が現役の外務省員だから仕方ないけどさ。そういう意味でも、厳密な意味での「研究書」とは言えないな。見方を変えると、日本の省庁内での「世渡りマニュアル」とも言える。

やっぱ、才能があっても、不器用で世渡り上手でなかった千畝さんの方がずっとカッコイイな。千畝さんは、男の中の男、「ラスト・サムライ」だよな。

それから、著者は真面目な学者さんらしく、一生懸命「一般向き」っていう注文に応えようとしているのは分かるんだけど、「杉原チルドレン」とか、寒いおやぢギャグはやめて欲しいね。外交官が諜報にかかわるのは当たり前なんで、テッシーみたいなノリで、「インテリジェンス・オフィサー」なんて言葉を何回も何回も連呼するのも発想が安直。インテリジェンスという「大釜」に何でも放り込み、何となくわかったような気にするのがテッシー流の欠点。歴史書なら、杉原のインテリジェンスの中身そのものを深く掘り下げるのが役割であって、それは、選挙演説みたいに、「インテリジェンス」という言葉を連呼するのとは別の話。

そもそも情報という言葉は、「情報資料を入手する手段であるべき諜報(その他、捜索・偵察等も)」と、「これによって得られる各種資料を審査考覈する整理統合」にわかつことができる。だから、英語の「インテリジェンス」とはほぼ同意。知ったかぶりのテッシーは、「インテリジェンス・オフィサー」だとか「スギハラ・サバイバル」(意味不明)だとか、やたらに横文字を有り難がってるが、無知のボロ隠しに過ぎない。流行語の羅列は、きどり星に住むインテリジェンス真理教の手嶋尊師にまかせておけばいい。

この本の初めの方で、「杉原研究も第二期」で、「既に手嶋龍一氏による小説『スギハラ・ダラー』により、新時代の方向性が示された」って書いてあるけど。。。はぁ?なんでやねん?思わず脱力。そりゃ、テッシーが日本史を知らんだけじゃよ。日本とポーランド参謀本部の協力関係なんて明石元二郎の昔からあることなんでね、『スギハラ・ダラー』を「研究」なんて持ち上げるジョークもいい加減にして欲しい。まぁ、このあたりは、編集部からの要請とかなんとかの、いわゆる《大人の事情》とかもありそうなんで、あまりツッコミを入れても仕方がないのかもしれないが。。。

テッシーの書評が、この本の刊行日と同じ日に出たのには大爆笑。こんなことはフツーじゃあり得ない。印刷所で製本されるやその場で速読し、WIMAX付きのコンピュータで速攻入力し、メール転送しても間に合わない。何しろ『波』は月刊誌なんだから、相当前に入稿していなければ間に合うはずがない。まだ刊行されていない著書の内容まで察知するとは、さすが「東アジアのインテリジェンス・マスター」である。杉原千畝にも、そこまでのニンジャみたいな能力はなかったただろう(と思う)。

「白石仁章は、『命のビザ』のヒューマニズムの陰に隠れる杉原のインテリジェンス活動をくっきりと浮かび上がらせ、従来の杉原像を根底から書き換えてしまった」とか、またまたテッシーのデタラメ書評が『波』に載ってるけど、不勉強から来る思い込み以外の何ものでもない。読後感は、ますます偉大な「ヒューマニスト」との感が強く残る。日本史上諜報活動に関わらなかった外交官がいたら教えてほしいぞ、テッシー(笑)。

『スギハラ・ダラー』との抱き合わせ商法は、セールスの戦略的大失敗だが、ただ、中身に関しては、新発見の資料とかもあって、こりゃプロにしか見つけられないね。それに全体の内容は、中公とか筑摩とかのシリーズと遜色ないと思うな。
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