マックス・ヴェーバーの「理念型」の解説書であり、モデルの立て方、活用の仕方の講釈本ではない。そこまで期待すると当然低い評価となるだろう。かつての小室氏の著書では、丸山真男と平泉澄について触れられていることはなかったので、この部分は一読の価値はあろう。
小室氏が「社会科学」という時に、その方法論はほとんどヴェーバーのそれである。現代の社会学者でも「モデル」という思考法を呈示した学者はたくさんいるのだが(典型例はブルデューだろう)、それらについて言及されることはない。
また、ひとつの危険性は、例えばヴェーバーの主著のひとつである「プロテスタンティズムと資本主義の精神」で呈示されている「理念型」が、その正しさを検証する方法がないにも拘らず、ひとつの真理であるかのようにとられられてしまう危険は、触れられてはいるが、強調されてはいない。これはモデル的思考を紹介したい著者の立場としてはそれでよいかもしれないのだが、マイナス面をもきちんと示すべきではないか、という気もする。該当書の書評を読んでも、ヴェーバーの結論を正しい真理として信奉している人間が、日本人には実に多いようである。愚かなり。