本書では、論者それぞれの立場から、格差社会論議の主要な論点や
論者独特の個性的な見方が無機的に提示されている。いわゆる論争集ではない。
このうち、渡部・日下両氏による対談「二極化社会も悪くない」は
そもそも論議が何ゆえ問題視されているのか、また中流・下流の何が
「悪くない」のかまるで理解しておらず、上流の顕彰という一点以外
部分的に矛盾さえある放談に過ぎず、目的論としてはともかく
格差社会の議論としては読むに値しない。
一方、若田部・本田・稲葉三氏による鼎談は、昨今の格差社会論と
共軛的なNEETというコトバの瀰漫とその実態数のカラクリを指弾している。
仮に、格差社会と認めるとしても、その政策はおろか方向性さえ
一筋縄ではいかないこの命題の難解さも読み取れ、本書の要諦と言えるだろう。
また、「『不平等』や『格差』を語ることはつねに酸っぱくて苦い。
なぜなら、それは人間を測ることだからである」「測るというのは
そういう汚れ仕事だ」という佐藤俊樹のこの痛ましい「感覚」の指摘は重要だ。
いみじくも前書きで述べられているように、格差社会論議の特徴とは
近代社会を生きるもの全てに「他人事ではない」現実を突きつけることにある。
とはいえ、結局は、自身の問題であるその現実をどのように判断し解釈するかだ。
本書はその一助となるはずである。