2002,3年に内閣府を中心に行われた「大停滞の解明研究会」をまとめたものです。
論文と対論から成っているのですが、議論がかみ合っておらず、それが露骨に出てしまっているところがあります。対論の部分を読んでみると、そこに先に目を通しておけば読むだけ無駄なことがわかったのに、とガッカリしました。
問題は、企画・人選が失敗だったことと、分析がラフかつ、限定的な意味しか見出せないアプローチをとっていることでしょう。ベースになってる論文が読める人はそちらを読んだ方がよほどに有益です。この本の元になった研究会では実のある議論もされたでしょうが、本として出版するに際して、その成果を誰に向けて表そうとしているのかがよくわかりません。しっかりとしたコーディネートが必要だったでしょう。
編者の総括コメントによると、「(二者択一的な)単純な立場に論者を追い込むことによって、現在の日本経済における金融要因と実物要因の相対的重要性と、その相互連関の性格がはっきり浮き彫りにしようというのがそのねらいである。こうして、このようなディベート方式の、方法的正当化ができる」とのことだが、それなら、編者の力量不足としか言いようがない。総括コメントもまたかみ合っていなかった。
しかしながら、論点となっている4つのトピックはいずれも重要なものなので、文中で随所になされているサーベイを基に他の論文で実質的な内容を掴む、という過程の第1段階として使うことはできます。コメントとリジョインダーが充実しているので、出来上がった論文だけを読んでるときには分かりにくい分析の問題点が分かってくるので、その点では有益です。しかし、同じような企画で先発された『失われた10年の真因は何か』と較べると、そちらの方がよほどに有益でしょう。