故・立川談志さんの考える「落語とは何か」を論じたおそらく最後の本です。
これまでの談志さんの著作は読んだことがありませんので、
他のレビュアーの方が指摘する「過去の著作の焼き直し」という批判はできません。
談志さん曰く、落語とは人生における諸々のやりとりの結晶、です。
そしてそれは人間の業の肯定、非常識の肯定なのだといいます。
落語とはなべて、人間が生まれたときから身につけさせられる「常識」に対する「非常識」なのであり、
落語家は高座という場所でその「非常識」を語り、客はそれを聞きたくてわざわざ足を運ぶと。
さらに深めれば、「自我」という人間の奥底のある何ともまとまらない部分を出し、
行き着けば、談志さんがしばしば口にする「イリュージョン」へと昇華する。
こうした落語論を、談志さんは本の中で何度も何度も繰り返します。それこそ狂気のように。
語りの中には落語とはなにかを示すために歴々たる落語家が登場しますが、ここでは割愛します。
最後の章「芸は、客のために演るものなのか」は、談志さんなりの遺言のようにも読めました。
談志さんが本当に優れた落語家だったのかは評価が分かれるのかもしれませんが、
落語に命を賭したことが、亡くなられた今になって皮肉にも強烈に伝わってきます。