『忘れられた日本人』などで知られる民俗学者、宮本常一氏の「調査地被害」という文章(1972年)を第1章とし、以後その問題意識を引き継いで、第2章から第7章まで安渓遊地氏がフィールドワークの経験にもとづいて「調査されるという迷惑」を語っている。
著者たちはこのブックレットを通して、野外調査(フィールド・ワーク)が、場合によっては調査対象となった地域の社会や資源を破壊することもあると警告している。
「おまえ、何をしに来た。なに調査だ? バカセなら毎年何十人もくるぞ」
調査地の一つ、西表島の人々から安渓遊地氏に浴びせられる言葉には、地域社会に対する学者の態度への怒りがはっきりと現れている。しかし、地域に良かれと思って行動すると今度は学者としての立場を放棄せざるを得ない事態が生じる。その問題についても安渓遊地氏は体験を語っている。
調査地被害に関しては、網野善彦『古文書返却の旅』(中公新書)も併読すると良いと思う。そこには宮本常一氏が返却していなかった対馬の古文書を約30年後に網野氏が返却する話が出ている。