本書はノンフィクションライター野村進氏が、「調べて書く」ことの「技術」についてまとめた本である。
つまり「実用書」として企画され、じっさいに「実用」の役に立つ本である。
4章までの「取材」についてのプラクティカルな解説は「ものを書く」ということに具体的に有益である。
「読みやすくてわかりやすい実用書だな」というのが前半を読んだところでの感想だった。
ところが後半、本書はとんでもなく面白くなるのである!
5章の「原稿を書く」については、古今のノンフィクションの名作の例文が紹介してあるのだが、これがべらぼうに面白い。
その本を読みたくてたまらなくなるのだから、すぐれた書評でもある。
このへんから、加速が始まる。
6章の「人物を書く」でさらに加速した本書は、7章「事件を書く」でクライマックスになる。
筆者の短編ノンフィクション「5人の少女はなぜ飛び降りたか」が全文紹介され、その取材過程が明らかにされる。
評者には「5人の少女〜」は未読であったので、このノンフィクションだけでも十二分に衝撃的であったのだが、
さらにそれに加えて「取材の舞台裏」が明らかにされる。
「ああ、これはこうやって取材されたのか」ということが分かるのだ。
例によって野村氏の達意の文章で。
一流のミステリを読むのと同じ、「ぞくぞくっ」を何度も感じた。
断言する。この7章を読むためだけでもこの本を買う価値がある。
最後は8章「体験を書く」で余韻を漂わせて終わる。
このへんもなんだか良くできている。
役に立つ上に、べらぼうに面白い。実に希有な本である。