自分も正に管理職になって数年たつ40代だが、いままでボンヤリと思っていたことが非常に明快に整理されて役に立った。
昔、とある別の本で「日本企業は“課長本位制”である」と書いてあったが、社内人脈とシステムに精通したカチョーさんは、ただ判子を押す中間管理職ではない。日本企業の人事システムは、別にアメリカ型に劣っているわけではなく、新卒社員を「主たる業務分野」と「サブの業務分野」間で上手く動かしながら、約20年かけてカチョーさんに育ててきたのだ。そして先進国の人事も思っているより相違点より類似点が多いことを説明する。
また、「他の会社で通用しなくなる」不安から、むやみに資格を追い求める一部の風潮にも反論する。ただ資格を取っても日常業務に関係なければタダの趣味だ。
例えば本書にある、経理部のスペシャリストになっていく例。簿記や会計の勉強だけして実務経験がない社員よりも、庶務経験者が伝票処理などの事務からスタートし、経理として敷居の低い債券管理業務などをまかされ、場数と経理のツボを押さえたころに学校へ通って「経理スペシャリスト」へ進化していく方がスムースだと説く。
要は「あれこれ悩む前に目の前の仕事に全力を尽くせ」という事なのだろう。
また成果給導入は、突如としてゼロサムになるような(歩合セールスマンのような)現状はほとんどなく、実態は上げやすく下げにくい給与の弾力性を都合よく説明するために利用されていることも明かす。こんな事は経営や人事でない人間にとってはあまり深く考えたことはないだろう。
就職直前の学生には、「自分に合った社風の会社を選べ(仕事で選ぶと異動がある)」「その際異動できる会社は社員150人以上だ」と具体的にアドバイスする。
また、経営者になる人物は、過去に異動や挫折を経験して、めげずにそこから学んだ人物が多い事も示唆する。上司側は適宜部下にチャレンジングな仕事を与えたり、違う部署に異動させて、「変化に適応する」人材を育てなければならない。
管理職直前の30代はもとより、既に管理職になった人、学生にも有用な本だ。ただし、ある程度以上の規模の企業の社員を対象にしているので、著者も言うように派遣社員やこの枠外の人には冷たい印象があるかもしれない。