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冒頭で示される、長兄と、その出産のために母の命を奪ったと父に忌み嫌われ養子に出される双子の兄弟・・・という設定は言うまでもなく後期クイーンのある作品を連想される。この”ある作品”でのオチはほぼ禁じ手に近いようなものだが、この『誰彼』の場合、双子が互いに同じ顔である上に長兄にも似ている、という設定ゆえに、綸太郎も読者も引きずり回される。それに、著者は、余程「謎は解けたと見せかけて最後の僅かな間にもう数回のどんでん返しを持ってくる」のが好きなようだ。
但し、この次の作品『頼子のために』の解説で池上夏樹氏が述べているように、”名探偵”の登場ゆえに「枠」が狭まっている感は否めない。推理小説に物語としての完璧さを求めはしないとしても、やはりまだ、ただトリックで探偵もろとも読者を引っ張り回しているだけの粗さがあるように思える。いや、惑わされること自体はいいとしても、あちらこちらに物語として発展する芽を残しながら本筋だけが爆走するので、本のボリュームの割には何か勿体無いという感じが残る。同様に、恋愛の要素を、淡くとはいえ持ち込み、この部分で綸太郎を道化にするのもとってつけたようだ。
”名探偵”の暴走ともいうべき、鼻持ちならない綸太郎の行動に対して、あくまで裏づけを重視している父法月警視の予測が実はほとんどの場面で正鵠を得ている、というところで辛うじて推理のバランスがとれているが。
もう一つの三題噺としては、「新興宗教・じゃぱゆきさん過激派の悲劇」が含まれている。こちらは個性的なキャラクターの配置で、新鮮さを失っていない。
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