GHQの占領時代にスタートした日本医師会は、吉田茂の姻戚である武見を会長にいただいてから多大な影響力を持ち始めた。以来、会長のワンマン体制が慣例となった。そのため本書では歴代会長の人物論を軸に、その時々の医療問題への反応を見ることで捉え難い組織の内情を描き出している。
大きな比重を占めるのはやはり武見時代である。医師優遇税制の導入や、制限医療の撤廃、前代未聞の“医師のストライキ”といった個々のアクションだけでなく、医師会が厚生省を牽制し、自民党が調整するという政策決定パターンを確立したのも武見だった。本書では約3分の2を費やして、その光と影をあぶり出している。武見と親交のあった著者ならではの貴重な証言録である。
小泉首相の医療改革は単なる財政処理であるという卓見も見逃せない。右肩上がりの経済が終わり、少子高齢化が進むこれからの時代、医療問題はとりわけ深刻だ。日本医師会の歴史を通じて医療政策の決定システムを俯瞰できる本書は、今後の医療問題を考えるうえでも必読書である。(齋藤聡海)
武見氏は会員のうち、3分の1は自分の収入のことしか考えない「欲張り村の村長」のような医師だと評した。歴代の会長は、“欲張り村の村長”をコントロールしながら、その時々の政治・経済・社会情勢と医療政策との折り合いをつけることに腐心してきた。
坪井氏は、小泉政権の医療改革で紆余曲折の末、2.7%の医療費削減を受け入れたが、それに対する医師らの反発は強い。著者は「日本医師会は単なる“賃上げ団体”なのか」と嘆息する。日本を代表するエリート集団と言える同会の内幕が浮き彫りになっている。
(日経ビジネス 2003/10/27 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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