著者の関わった日本で最初の3つのコンセンサス会議、その企画準備段階から、実際の日程や議論・まとめまでが詳細に、しかし決して難しくない平易な言葉でレポートされている。もっとも機能していると考えられているデンマークでの事例も載せられており、「コンセンサス会議」とはどんなものか、は充分理解できる。少々長いと思われる引用部分などもあるが、決して冗長ではない長さである。専門家やお役人、企業家や著者本人までもの「なまの声」や反省も書きたいという著者の気持ちがこの長さにさせてしまったのだろう。
「公募で集めた一般素人=市民が中心となり、取り上げた課題についての専門家の説明を聞いて意見を交換し、問題点・提言を取りまとめる」というのがおおよそのコンセンサス会議の説明かと思う。詳しくは本書を読んでいただきたい。
「遺伝子治療」「インターネット技術」「遺伝子組み換え農作物」といった、ここで取りあげられたコンセンサス会議のテーマをあげるまでもなく、科学技術が進んだことで一般社会生活にメリットもデメリットももたらしている事例は増え続けている。科学技術が社会にもたらした問題に社会はどう対処していけばよいのか。ここで詳細にレポートされた会議は1998、1999、2000年に開かれた。それから10年近くたち、こういった科学の研究の先端側と市民側の先端とのすり合わせの努力はどうなっているのだろう。状況は変化し続けているのであり、対応方法もそれにつれて変わっていく部分を持たねばならないだろう。そういう意味では「終りのない」努力しかないのかもしれない。
幾つかの方法のひとつ、のレポートではあるが、これからの科学と社会、一般市民と政治のありようについて、さらには会議というものについて充分考えされてくれる良書であった。